医者がつらい・やめたいと感じる5つの理由と対処法|辛い環境から抜け出す方法

疲れた表情で診察室に座る医師
医者が辛い・やめたいと感じる理由とは
医師という職業は、多くの人から尊敬され、社会的地位も高い職業です。しかし、その裏側では多くの医師が日々の業務に疲弊し、「つらい」「やめたい」と感じることも少なくありません。
白衣を着た瞬間から、患者の命を預かる重責を背負い、日々緊張感のある環境で働く医師たち。彼らはどのような理由で仕事に対してつらさを感じているのでしょうか。
医師の仕事がつらいと感じる理由は人それぞれですが、多くの医師に共通する主な要因があります。ここでは、医師がつらい・やめたいと感じる5つの理由について詳しく見ていきましょう。
1. 長時間労働と不規則な勤務スケジュール
医師の仕事において最も大きな負担となっているのが、長時間労働と不規則な勤務スケジュールです。一般的なサラリーマンとは大きく異なる勤務環境が、医師の心身に大きな負担をかけています。
2019年に実施された調査によると、週労働時間が60時間以上の医師が全体の37.8%、週80時間以上の医師が全体の8.5%にも上ることがわかりました。これは一般的な職業と比較しても非常に高い数値です。

夜遅くまで病院で働く医師たち
特に勤務医は、長時間労働や残業が日常的に発生し、夜勤や宿直、休日出勤も頻繁にあります。救急対応や緊急手術などで予定外の勤務が入ることも珍しくありません。
このような状況では、ワークライフバランスを保つことが難しく、家族との時間や自分自身の休息時間を確保することができません。慢性的な睡眠不足や疲労の蓄積は、医師の心身の健康を蝕んでいきます。
2. 複雑な人間関係
医療現場では、多くの医療スタッフが協力して患者の治療やケアにあたります。医師、看護師、薬剤師、検査技師など、様々な職種のプロフェッショナルがチームとなって医療を提供しています。
しかし、このような環境では人間関係が複雑になりやすく、医師を悩ませる大きな要因となっています。特に以下のような状況が、医師にとって大きなストレスとなることがあります。
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ベテラン医師と若手医師の間の経験や権威の差からくる意見の衝突
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医師の判断に対する他のスタッフからの意見や指摘
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忙しい病院環境でのコミュニケーション不足によるトラブル
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患者やその家族との関係構築の難しさ
医療は命に関わる仕事であるため、些細な意見の相違でも大きな摩擦に発展することがあります。また、常に緊張感のある環境では、スタッフ間のストレスも高まりやすいのです。
3. 患者の命を預かるプレッシャー
医師は患者の命を預かる責任を負っており、その重圧は想像以上に大きいものです。診断や治療の決断が患者の将来を左右することもあり、常に最善の判断を求められます。

手術中の緊張状態の医師
特に救急医療や外科などの急性期医療では、緊急事態に即座に対応しなければならず、その責任の重さから「つらい」と感じる医師が多いようです。
患者の死や重大な障害が発生した場合、医師自身がトラウマを抱えることもあります。「もっと早く気づけていれば」「別の治療法を選択していれば」という自責の念に苦しむ医師も少なくありません。
このような精神的な負担の蓄積は、医師の心の健康を損ない、バーンアウト(燃え尽き症候群)を引き起こすこともあります。
4. 訴訟リスク
医師の仕事には常に医療訴訟のリスクが伴います。最善を尽くした治療でも、望ましい結果につながらないことはあります。そのような場合に、患者や家族から訴訟を起こされるリスクは、医師にとって大きなストレス源となっています。
医療訴訟は医師の評判に大きな影響を及ぼすだけでなく、経済的な負担も生じさせます。また、一度訴訟に巻き込まれると、その対応に多くの時間と労力を費やすことになります。
このような状況から、防衛的医療(訴訟を避けるために必要以上の検査や治療を行うこと)が行われることもあり、医師本来の判断が歪められることもあるのです。
5. ワークライフバランスの崩れ
長時間労働や不規則な勤務形態は、医師のプライベートライフに大きな影響を与えます。家族との時間、趣味や休息の時間を十分に確保できないことで、生活の質が低下してしまうのです。

深夜に病院から疲れて帰宅する医師
特に子育て中の医師にとって、この問題は深刻です。子どもの学校行事や家族の記念日に参加できないことも多く、家族との関係に悩む医師も少なくありません。
また、不規則な生活リズムは健康にも悪影響を及ぼします。食生活の乱れや運動不足、睡眠障害などの問題を抱える医師も多いのが現状です。
医師自身の健康が損なわれることで、さらに仕事のパフォーマンスが低下するという悪循環に陥ることもあります。
医師がつらい・やめたいと感じたときの対処法
医師としての仕事がつらいと感じたとき、どのように対処すればよいのでしょうか。ここでは、医師が仕事のつらさやストレスを感じたときの効果的な対処法について解説します。
ストレスを発散する方法を見つける
医療現場では、ストレスやプレッシャーがかかる場面が多いものです。患者の命に関わる責任の重さや長時間の勤務、医療ミスへの不安など、ストレスの要因は様々です。
ストレスを溜め込まずに発散することは、医師としてのパフォーマンスを維持するためにも重要です。自分に合ったストレス解消法を見つけ、定期的に実践しましょう。

ジョギングをする医師
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運動(ジョギング、ヨガ、ジム通いなど)
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趣味に没頭する時間を作る
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自然の中でリフレッシュする
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音楽を聴いたり、映画を観たりする
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友人や家族との時間を大切にする
特に体を動かすことは、ストレスホルモンの分泌を抑え、心身のリフレッシュに効果的です。忙しい勤務の合間にも、短時間でできるストレッチや深呼吸などを取り入れてみましょう。
適切な休息を確保する
医療現場は休みが少なく、長時間の勤務はつらさやストレスを増幅させる要因のひとつです。体力や精神面の健康を守るためには、十分な休息を取ることが重要です。
医師の勤務は不規則なことが多いものですが、できる限り睡眠時間を確保するよう心がけましょう。質の高い睡眠は、ストレス耐性を高め、判断力や集中力の維持にも繋がります。
また、休暇を取ることも大切です。たとえ短期間であっても、仕事から離れる時間はリフレッシュにつながります。年次有給休暇を計画的に使用し、心身の回復に充てましょう。
周囲に相談する
医師がつらいと感じる場合、一人で抱え込まず、周囲に相談するのも効果的な方法です。医療現場は協力とサポートが必要不可欠であり、同僚や上司など、信頼できる人に相談することが重要です。

同僚と話し合う医師
多くの医師は同じような経験があるため、つらさやプレッシャーに共感してくれるでしょう。感情や悩みを打ち明け、アドバイスをもらうことで、今抱えている悩みが解決するかもしれません。
また、キャリアの相談であれば転職エージェントに相談するのも選択肢です。医師専門の転職エージェントは、医療業界に精通しており、適切なアドバイスを提供してくれるでしょう。
心の健康に関する深刻な悩みがある場合は、専門家(心理カウンセラーや精神科医)に相談することも検討してください。医師であっても、心のケアは専門家に任せることが大切です。
自分の限界を知り、無理をしない
医師は責任感が強く、患者のために自分を犠牲にしてしまう傾向があります。しかし、自分の限界を超えて働き続けることは、長期的には患者にとっても良いことではありません。
自分の体調や精神状態に注意を払い、無理をしないことが重要です。必要であれば、業務の一部を同僚に依頼したり、勤務調整を申し出たりすることも検討しましょう。
医師自身が健康であることが、良い医療を提供するための基盤となります。自分のケアを怠らないことは、患者へのケアの質を高めることにもつながるのです。
医師の働き方改革で変わること
近年、医師の働き方改革が注目トピックのひとつとなっており、2024年4月には医師の時間外労働時間に制限を設ける法律が施行されました。この改革は、医師たちの働き方をより効率的にし、医療サービスの質と安全性を向上させることを目指しています。
時間外労働の上限規制
2024年4月以降、勤務医の時間外・休日労働時間は、年間の上限が原則960時間、月間100時間未満となりました。これは一般企業に定められた上限720時間よりも多いものの、これまで無制限だった医師の労働時間に一定の歯止めがかかることになります。

タイムカードを押す医師
医療機関は、その機能や特性によってA水準、B水準、C-1水準、C-2水準の指定を受け、B水準・C水準の機関に勤める医師のみ、年間の時間外労働上限時間が1,860時間に緩和されます。
この改革により、これまで常態化していた医師の過重労働が是正され、医師のワークライフバランスの改善が期待されています。
医師の健康を守るための新ルール
医師の働き方改革では、時間外労働の上限規制だけでなく、医師の健康を守るための新たなルールも導入されました。
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時間外・休日労働が月100時間を超える医師に対し、面接指導を実施
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終業から次の始業まで、原則9時間のインターバルを確保
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インターバル中に発生した労働については、代償休息を取得
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連続勤務時間を28時間に制限
これらのルールにより、医師の過重労働による健康被害を防ぎ、医療の質と安全性を確保することが目指されています。
つらい環境から抜け出す方法
現在の環境があまりにもつらく、改善の見込みがない場合は、環境を変えることも選択肢のひとつです。医師としてのスキルや知識は、様々な場所で活かすことができます。
転職という選択肢
医師が環境を変える方法として最も一般的なのが転職です。勤務先を変えることで、職場環境や人間関係を改善できる可能性があります。

転職について考える医師
転職を検討する際には、以下のポイントに注意しましょう。
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新しい勤務先を選ぶ際には、面接や見学の機会を積極的に活用する
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過重労働がないか、働いている人との相性は良さそうかなどを確認する
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給与や福利厚生だけでなく、勤務環境や教育体制なども重視する
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転職エージェントを活用して、非公開求人や内部情報を入手する
医師として働くことに限界を感じる場合は、医療機関以外での仕事を視野に入れるのも方法のひとつです。製薬会社でのメディカルドクターや、医療関連の一般企業での職務など、医師の知識を活かせる場は多くあります。
フリーランス医師という働き方
近年注目されている働き方のひとつが、フリーランス医師です。フリーランス医師は特定の医療機関に所属せず、複数の医療機関と契約を結んで働く形態です。
フリーランス医師の最大のメリットは、自分の裁量で勤務時間や勤務先を決められることです。ワークライフバランスを重視したい医師や、様々な医療現場を経験したい医師に向いています。
また、人間関係で悩む機会が少ないのも特徴です。特定の職場に縛られないため、職場の人間関係に悩まされることが少なくなります。
ただし、フリーランスとして働くには、ある程度の経験と専門性が求められます。また、福利厚生や安定性の面では、常勤医師と比べて不利な点もあることを理解しておく必要があります。
開業という選択
勤務医としてつらさを感じる原因が、経営層との方針の違いや過重労働に起因する場合、開業することで状況を改善できる可能性があります。
開業のメリットは、自身のペースで働くことができ、自分のやりたい方法で医療を提供できることです。診療方針や勤務時間を自分で決められるため、理想の医療を実現しやすくなります。
しかし、開業は簡単なことではありません。高額な開業費用が必要なうえ、経営者としての知識やスキルも求められます。また、開業準備には多くの時間と労力がかかることを覚悟しなければなりません。
新規開業だけでなく、既存のクリニックや医院を引き継ぐ「承継開業」という方法もあります。承継開業であれば、初期投資を抑えられるうえ、既存の患者基盤を引き継げるメリットがあります。
医師におすすめの転職エージェント
転職を検討する際には、医師専門の転職エージェントを活用するのが効果的です。ここでは、医師におすすめの転職エージェントを3社紹介します。
医師転職ドットコム
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まとめ:医師の仕事がつらいと感じたら
医師の仕事がつらい・やめたいと感じる理由には、長時間労働や不規則な勤務スケジュール、複雑な人間関係、患者の命を預かるプレッシャー、訴訟リスク、ワークライフバランスの崩れなどがあります。
これらの問題に対処するためには、ストレス発散法を見つける、適切な休息を確保する、周囲に相談する、自分の限界を知り無理をしないことが大切です。
また、2024年4月からは医師の働き方改革が施行され、時間外労働の上限規制や医師の健康を守るための新ルールが導入されました。これにより、医師の労働環境が改善されることが期待されています。
現在の環境があまりにもつらく、改善の見込みがない場合は、転職やフリーランス医師への転身、開業などの選択肢も検討してみましょう。医師専門の転職エージェントを活用すれば、自分に合った働き方を見つけるサポートを受けることができます。
医師という職業は、人々の健康と命を守る尊い仕事です。しかし、医師自身が健康でなければ、良い医療を提供することはできません。自分自身のケアを怠らず、必要であれば環境を変える勇気を持つことも大切です。
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